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金沢市の中心部から南西の郊外に建つ住宅。
敷地は昭和40年代から開発された住宅地にあり、周辺の公営住宅に隣接する広場や公園、数十年かけて育った木々の並ぶ緑道が良好な環境を形成している。そこに住む建主夫妻が定年後に自宅で過ごす時間が増えることを見据えて、所縁のある白山麓の自然の豊かさとログハウスや山荘の記憶を感じられる住宅へと建替える計画である。設計にあたっては、住宅地の中でどのように「山」という要件を満たし調和させるかを心掛けて計画を進めた。

敷地の基壇状の造成はそのまま生かして、駐車以外の庭や建物は基壇の上に配置することで、高低差によって町と建物を隔てながらも緩くつながっている。建物の手前側には天井の高いリビングなどの1層のボリュームを、奥には寝室と水回りの上に書斎を設けた2層のボリュームを配置し、それら2つが連なるように切妻屋根を架けた。周囲に馴染むように屋根は4寸勾配で外壁はスギの縦羽目板張りとした。

リビングは羽目板張りの非対称な勾配天井とし、南北に設けた庭の木々やスギ板の外壁を窓越しに見えるようにすることで「山」を意図しており、床の間に倣った飾り棚や欄間の付いた開口部、化粧垂木の深い軒などは木造住宅の伝統を意図したものである。また和室および寝室は庭を介してリビングと適度な距離で気配を感じられるような配置とした。水回りや納戸も1階にまとめ、日常は1階だけで過ごせるように計画しており、2階には小屋裏のように天井の低い書斎を設けている。植栽は県内に自生するものを主としており、建主にとっての記憶や豊かさを目指した庭や建物が、緑道の木々のように周囲にも豊かさをもたらしてくれればと思う。